新スタジオができるまで「第十一話 最終的に持つべきものは友」

 

 庭師に言われ、訪ねたのは地域に根付いて50年の不動産屋。対応してくれたのは、とても真面目そうな社長さん。地元話に花を咲かせつつ、

「実は大家さんとは昔からの知り合いなんです。」

と、Mのビルについて尋ねてみると、

「あぁ、あそこの物件の資料は・・・。あったあった。これですね。」

と、資料を渡されました。資料に目を通すと、やはり賃料は私が想定しているよりは高く、難しいかなと思いながらも、

「賃料は〇〇円を上限に物件を探していまして・・・。」

と言うと、

「久保田さんはMさんとは昔からのお知り合いなんですよね。賃料については私の方から聞いてみますので、とりあえず物件を見に行きましょう。」

と、言ってくれて、Mのビルの内見に向かいました。

 

数年前、タイルカーペットを剥がしに行った時の記憶だと、天井高はそこまでなかったような気がしましたが、改めて見てみたら想像以上に高さがあり、広さはこれまで内見に行ったどの物件よりもありました。トイレ、洗面台等の設備もしっかりあり、エアコンも2機付帯されていて、防犯対策もしっかりしていました。賃料さえ私が支払える範囲であれば、是非ここに決めたいと思いました。

 

不動産屋が連絡してくれたらしく、しばらくするとMの母ちゃんが来てくれました。

「久しぶりね!お母さんは元気!?スタジオにする物件探しているんでしょ?久保田くんがここ借りてくれるなら、こんな嬉しいことはないわ!賃料も不動産屋さんから聞いた金額で大丈夫よ!」と、言ってくれました。

ありがたきお言葉!

思えば10代の頃からしょっちゅう遊びに行き溜まり場にしていた、第二の我が家のような、第二の母みたいな存在。借りる側としてもこんな安心なことはありません。

見計らったかのように不動産屋が、

「どうされますか?決めますか?」

と訊ねてきたので、

「決めます!!!お願いします!!!」

と、私が答えると、Mの母ちゃんが、

「庭師のTちゃんに感謝しないとね!貸したい私と借りたい久保田くんを繋げてくれたんだから!」

本当にその通りです。まさかこんなに近くにこんなに良い物件が存在していることに気づかず、庭師がいなければ未だ物件を探し続けていた可能性すらあるわけですから。

 

そして、その日のうちに不動産屋に戻り、早速申し込みをしました。それから2日後に保証会社の審査も無事通過したとの連絡を受け、無事契約が成立しました。

 

紆余曲折あり長かった物件探しも、最終的には友の力を借りて、ここに幕を閉じたのでした。

 ちなみに、物件の階数は1階でした。庭師の記憶力より私の方が少し優っていたようです☆

 

 「次回最終話 これから」

ぜってぇ見てくれよな!